【書評】「ありカトキチ」のマネはできない。でも、顧客志向のマネならできる。
「ご麺なさい」「ありカトキチ」「おそれいりこだし」……。WEBマーケティングに少しでも関わっている人なら、冷凍うどんで有名な「カトキチ」のことを一度は耳にしたことがあることでしょう。冒頭に紹介したのは、カトキチ公式アカウントがtwitter(ツイッター)上で連発したダジャレの代表例です。
そんなダジャレの裏側にある、豊富なエピソードやマーケティングの考え方が、書籍で読めるようになりました。今回の書評でご紹介するのは、カトキチ公式アカウントでひたすらつぶやきまくった“ツイッター部長”=末広英二さんの著書、『ツイッター部長のおそれいりこだし』(発行は日経BP社)です。
【書評】ツイッター部長のおそれいりこだし
ツイッター部長のおそれいりこだし
お客様と築く140文字のコミュニティ
末広さんはカトキチブランドの冷凍食品を扱っているテーブルマーク株式会社で、PRや販売促進支援を担当しています。2009年10月にツイッターで公式アカウントを独自の判断で取得して以来、連日つぶやきを発信してきました。
先にも紹介したような味のあるダジャレが、2万人規模のフォロワー層を形成。スーパーの発注担当者がカトキチ製品の発注をかけたり、店長に掛け合う人までもが登場したそうです。一連の活動はマスメディアにも取り上げられており、まさにカトキチブランドの浸透に貢献した立役者といえるでしょう。
ダジャレの裏にある顧客中心思想
ツイッター部長の成功は、末広さんの人柄と、カトキチというブランドが絶妙に重なり合ってこそのもの。言わずもがなですが、カトキチ公式アカウントをそのままマネすることは、まずできません。
それでも、私たちが唯一“マネ”できそうなのは、ダジャレの背景にある考え方。書籍の後半には、末広さんがこれまでの職業人生から得た、さまざまな知恵やノウハウが詰まっています。末広さんは調理師専門学校を卒業したのちに米国に遊学。帰国してからは映像制作会社を起業。さらにはその会社を人に譲って「牛角」を持つレックス・ホールディングスに入社するなど、興味深い職業歴の持ち主です。
映像の間合いはつぶやきに活きた
なるほどと思わせたのは、末広さんが本書の中で語った、ツイッターと映像作りとの間にある共通項。映像作りでつかんだ目線と距離感。インタビュー撮影でつかんだ間合いの取り方。これがツイッターのようなコミュニケーションメディアに活きているとのこと。
最後に末広さんが述べた大切なポイントは、相手への気遣いや、相手を楽しませたいという気持ち。「当たり前のことだけど、確かにそれって大事だよなあ」。本書には、素直に同意できるさわやかな読後感がありました。
同じ内容でも、よくあるビジネス書なら頭ごなしに語りがち。読み手は得てして「大事なのは分かっているけどさ…」と表現しがたいモヤモヤ感や反抗心を抱くものです。そんなビジネス書との違いは、末広さんの人柄が生んだのでしょうか。最新WEBメディアの現状と、いつの世でも変わらぬ顧客志向の考え方をもう一度再認識したい人に、特におすすめの一冊です。
(高下 義弘=編集者/ライター)
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